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気まぐれ系読書ブログ

プロ野球捕手に読書は必要か


昨今元プロ野球選手が何人も野球に関するYouTubeチャンネルを開設している。なかでも人気なのが元ヤクルトの古田敦也氏が運営している「フルタの方程式」。古田氏は現役時代「球界の頭脳」と呼ばれたほどの名捕手で、野球の解説には定評がある。今回はその「フルタの方程式」にアップされたプロ野球選手はマンガを読むと怒られる?【キャッチャーズバイブル】」を紹介したい。

 


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(2022/4/8取得)

 

内容を簡単にまとめると「スポーツ選手に読書は必要か?」となる。もちろんプロスポーツ選手は圧倒的なフィジカルなくして活躍できない。読書をする時間があるならもっと練習すべき、身体作りすべきと言う意見もあるだろう。この動画のユニークなところは元プロ野球捕手たち(古田敦也、元横浜・中日の谷繁元信、元広島の達川光男)が集まってその必要性に自身の意見を述べているところだ。プロ野球選手、ましてやトップ捕手たちの意見などそうそう聞けるものではないし、この動画には一見の価値があると思われる。

野球に詳しくない人のために一応解説しておくと、捕手は野球のポジションでピッチャーのボールを受ける人、いわゆるキャッチャーである。野球の守備陣形において唯一他のすべてのポジションの選手を見ながらプレイすることになり、同時にピッチャーに配球を指示するなどチームの司令塔としての役割が求められる。このため殊に日本では捕手=頭脳派のイメージが強い。

詳しくは動画に譲るが、古田氏の読書習慣は野村克也監督の影響が強いという。野村克也氏といえば「ID野球」の名で知られる頭脳派野球の提唱者である。今ではこれらの戦略は当たり前になっているが、当時は野村監督の専売特許だったに違いない。野村監督は自分のチームの選手に頭の良さそうな印象を望んだようだ。

古田氏は捕手の読書の必要性を「ピッチャーなど、いろんな人と付き合うから」と答えている。またこれは野球選手全員に関わることだが、文字に慣れていない(文字を拒絶する)野球選手がミーティングに集中できないことも挙げている。
谷繁氏は横浜時代のバッテリーコーチ・大矢明彦氏に言われていろんな本を読むようになったという。本を読むことで投手に指示を出す際に自分のいろいろな言葉が出るようになったという。

これらのコメントはこれから読書に力を入れたいと思っている人、読書教育に関わっている学校の教職員らにとって有益な情報と言えるのではないだろうか。あくまで個人の感想であるし、読書と読解力に因果関係なしという人への反論にはなりえないだろう。ただし少なくとも彼らの野球人生に多少なり読書が影響していたわけであるし、これから本を読むという営みをする人にとって一筋の希望となることは間違いないはずだ(もちろんプロを目指す野球少年少女たちにも)。

なお達川氏のエピソードは面白いし詳しい話が気になるのだが、ここではあえて触れないので動画本編で確認していただきたい。現役時代を知らない人には話がおもしろい愉快な人に見えるが、現役時代は結構な戦略家だったらしい。

最後に捕手が頭をよく見られないといけないという点について。これは私見だが、古田氏が他の動画などで「高卒ルーキーで捕手のポジションを勝ち取ることの難しさ」を語っていることが参考になる。捕手は投手らに指示を出すポジションである。そのため親子ほども年の離れたベテランレギュラーに対して若い捕手が指示を出すことは大変だという。

それら年上のチームメイトたちに認めてもらうことは容易ではない。大ベテランを含むどんなチームメイトともコミュニケーションを取れる知識量は読書によって培われるだろうし、そもそも物や言葉を知らないのでは目上の人たちに舐められてしまうだろう。頭脳派のイメージの強い捕手ならなおさらその傾向があるに違いない。

 

余談。

古田敦也氏といえば『古田式・ワンランク上のプロ野球観戦術』がおすすめ。野球観戦は好きだけど野球未経験で詳しくないという人に向いている。非常にわかりやすいし、野村克也氏が徹底ミーティングをしたという投球カウントごとの投手と打者の心理・駆け引きは一読の価値あり。