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気まぐれ系読書ブログ

読書記録『夜凪さんのよなよな餃子』①

 

「餃子とビールがあれば、明日もまた頑張れる」(帯文より)

会社員の西真白は断れない性格でいつもいつも残業ばかりである。ある週末、彼女は仕事帰りに小さな餃子屋を見つけた。思い切って入店した古民家風の店内には他に客はなし。しかし若き店主・夜凪(よなぎ)は、無愛想ながら客のリクエストや心情を汲み取って最高の餃子を提供するスペシャリストだった。西は夜凪の腕前に魅了され、仕事帰りに足繁く彼女の店に通うようになるのだった。

 

芳文社の無料ウェブ漫画サイト・コミックトレイルにて連載中(なお2021年10月掲載の第8話以降半年ほど更新がされていない)の本作から1〜7話を単行本化。一時期ブームになったグルメ漫画の系列に並ぶ作品だが、扱うのは超王道の「餃子」。ただし凄腕の監修者の協力もあり、作中で扱われるその調理バリエーションの数々には驚くばかりである。
超美麗絵師と評される作者の書く餃子は書き込みが細かく目を引きつけられる。客の心情も加味しているのか料理が皿ごとキラキラ輝いているが、そのコントラストが夜の居酒屋らしさを演出して雰囲気を伝えてくれる。暗い店内で美味しい料理が出てくると(お酒の酔いも手伝っているのだろうが)皿やグラスのなかが輝いて見えるものである。もちろん美味しくあって初めて、だが。
客が少ない(特に女性)という設定もあり、現時点で登場人物は一部の常連がほとんど。第7話から餃子フェスの話が進んでいること、夜凪の大学時代の関係者が登場していることを除けば特に大きなストーリー性はない。しかし餃子の絵面を一度でも見てしまうともう胃袋を掴まれたも同然である。次の餃子を見たくてページを捲り捲り、気づけば食後すぐなのに腹が鳴り始める。こうなっては「そうだ、今晩は餃子にしよう」とならないはずがない。
一部餃子レシピも公開されているが、決してお手軽路線ではなくちょっと手が出ないレベルだったりする。しかし西が自宅で餃子を作る話もあったり、調理面でも学ぶところもちらほらである。
ネオンの輝く夜の街、開放感(解放感?)の象徴・生ビール、肉汁が食欲をそそる圧倒的存在感・餃子。これが揃えば文句なしだろう。新型コロナウイルス流行でなかなかお酒を飲みに行けないが、居酒屋での幸福感を思い出させてくれる幸せなひとときを味わわせてくれる。

※マンガのPVを発見。


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さて余談。
きのこの山派vsたけのこの里派の対立はよく知られているが、ビールのつまみ餃子派vs唐揚げ派も熾烈である。個人的にはどちらもOKなのだが、わずかに餃子リードだろうか。作中でもそんなシーンがあるが、餃子は御飯と食べてもうまい。田舎暮らしだと車の運転の都合なかなかビール&餃子コンビにありつけないというのもあるが。

麦酒男タカバシ氏も餃子派らしい。

draftbeer.jp

そう、餃子は栄養バランスにも優れるのである。

 

初めてひとり暮らしをしたとき、近所に餃子の王将を見つけて入ったのを思い出す。不思議なもので、あのとき食べた白飯と餃子が今までで一番美味しく感じた気がする。他にもたくさん美味しい餃子を食べてきたはずなのに、不思議である。新しい生活、新しい仕事。山積みのストレスを癒やしてくれたのがあのときの餃子だったのだろうか。そう考えると、西の気持ちもよくわかるのである。

 

最後に全然関係ないけど私の好きなPANの「餃子食べチャイナ」を。この中毒性、うまい餃子の如し。


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